最近発売された『季刊・アナログ vol.82』で「10万円台のカートリッジ一斉比較、合計18モデル」が特集されていましたので、参考になるかもと思い購入しました。試聴は生形三郎氏が担当されています。生形氏は評論家の中では自分と近いオーディオ再生の価値観を持った方ではないかなと、ただ今片思い中です😍
試聴された18機種の中で私が興味あったのは下記の3機種です。生形氏の感想の一部を箇条書きにしてみました。試聴に使用されたアナログプレーヤーは LUXMAN PD-171A、イコライザーアンプ、プリアンプ、パワーアンプはすべてアキュフェーズ、スピーカーはB&W 803D4です。
1.audio-technica AT-ART9XA
- しっとりした音色と輝かしさが同居したサウンド
- 身の詰まった密度感豊かな表現
- 弦楽器や木管楽器などに、木質の湿度観とブリリアントな倍音表現が両立
- メリハリある音色を実現していながらも、全体的には聴きやすいバランス
2.audio-technica AT-ART9XI (私が昨年末に購入したモデル)
- 空芯型のXAと比較すると、音色面では、メリハリよりも全体的なバランスの良さを追求したモデルと感じる
- 質感自体の繊細さこそXAに分があるが、音の密度はこちらの方が濃厚だ
- 透明度や開放的なヌケの良さを重視するというより、身の詰まった心地良い重みや密度が魅力的
- 精細さとメリハリある音色を好むならXA、音色バランスや聴き易さで選ぶならXIがオススメ
3.DS Audio DS-E1 (第一世代のDS001を所有)
- キャラクターを排した音色
- 鮮度感の高いエネルギッシュなサウンド
- 情報量では上位機種に譲るが、音像や音場へのタイトなフォーカスが魅力
- 他の機種と駆動方式が異なるだけに、まさに別次元のもの
- レコード再生時に介在する種々の要素をすっ飛ばしてマスターテープやマスターファイルにリーチするような音の方向性と感じる
- ロックやジャズなどをパワフルに再生したい方にお勧め
ここからが、今日の本題です。
最近、我が家のアナログ機器の配置も落ち着いてきましたので、生形氏の試聴記を頭の隅において、下記のカートリッジとトーンアームの組み合わせで試聴してみました。プレーヤーはノッティンガム Spacedeck の改造品、スピーカーは自作の楕円三兄弟です。
- DS Audio DS001 + グランツ MH-10B + DS001専用イコライザー
- audio-technica AT-ART9XI + ロクサン TABRIZ-ZI +SUTHERLAND HUBBLE
試聴には、下記のレコードを使いました。この曲は16のティンパニと2つの大太鼓など大編成のオーケストラに加えて200人を超える合唱団での演奏ですので、挑戦しがいのあるオーディオ再生になります。特別、録音がいいからと選んだわけではなく、何気なくレコードラックから取り出したのがこのレコードでした。
- ベルリオーズ : レクイエム シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団
ジャズやボーカルもののレコードも使ったのですが、駄耳の私には両カートリッジの違いはブラインドテストしたら分からないレベルの差しか感じられませんでした。車の試乗で、街乗りではどの車に乗っても走りや乗り心地の差は微妙なレベルですが、峠やサーキットで試乗車の有する能力を発揮させると、自分が運転するのが楽しいと明確に分かるのと同じではと、車の運転が苦手な私ですが、想像します。
下記が私の感想です。カッコ内のコメントは素人の私が考える要因です。トーンアームを取り替えての試聴もすれば客観性が増すのですが、我が家ではこの組み合わせ固定ですので、面倒なこともあり行いませんでした。
① DS Audio DS001 + グランツ MH-10B + DS001専用イコライザー
- オーケストラの後方で鳴っている大太鼓の弱音の超低域の最初の打音が明瞭。何気なく聴いていたら気づかないレベルですが、一度気づくと音量に関係なく感激するくらい自然なオーディオ再生です。これだけで、コンサートホールで聴いているような錯覚を覚えます。プロの評論家はこのようなことを日常的に体験されているのでしょうね。この超低域の再生能力は、振幅比例型のカートリッジの最大の長所のようです。
- 空間表現が狭い、人によっては音像や音場へのタイトなフォーカスが魅力とも言える(第1世代のDS001のチャンネルセパレーションは24dB、第3世代のモデルでは27dBに改善されているが、業界標準は30dB)
- 弱音域の情報量が少ない、ダイナミックレンジの広い交響曲などではホールトーンの再現が控え目、小編成の音源では人によってはエネルギッシュなサウンドと感じるかも
- 針先とレコードの溝との間にミクロンレベルの隙間があり(私のイメージ)、暗騒音にザラザラ感を感じる
② audio-technica AT-ART9XI + ロクサン TABRIZ-ZI +SUTHERLAND HUBBLE
- 大太鼓の弱音の超低域の最初の打音が不明瞭 大太鼓内の響きがボ〜ン・ボ〜ンと聴こえる、DS001の超低音の音を知った今だから、言えるコメントです。
- 空間表現が広い、これは私が重視している要素の一つ
- 弱音域の情報量が多い、ハイレゾ音源を聴いている感じにさせてくれる
- 針先がレコードの溝を完璧にトレースしている印象
- DS001と比べてエネルギーバランスおよび音色の差は、私には区別できないレベルですが、空間と弱音域の再現力の違いが好みの別れどころ
生形氏が比較された空芯型のAT-ART9XAを私は試聴したことはありませんが、我が家のシステムで聴く限りAT-ART9XIが濃厚な音、身の詰まった心地良い重みや密度の音には感じられません、昨年12月、あるショップで5種類のカートリッジを比較試聴した時の印象と同じです。AT-ART9XAは超が幾つも付くくらい繊細な音なのでしょうか。
今回のカートリッジの試聴を終えて、アナログ再生の楽しさが分かりました。我が家の場合、デジタルチャンネルデバイダーがシステムの司令塔の役割を担っていますので、アナログ再生ではA/DおよびD/A変換が伴いますので、そのクオリティーには期待していない自分がいました。そのハンディはいかんともしがたいですが、それでも、今回のカートリッジの聴き比べで、アナログ再生の楽しさを十分に味わえることが分かったのは収穫でした。そして、更なる欲もでて、雑誌などの評論を読んで私が勝手にときめいているカートリッジも聴きたくなっています。
audio-technica AT-ART9XA
AT-ART9XIのレコード再生には今のところ大満足ですが、もしかしたら、繊細さを求める私にはAT-ART9XAの方が合っているかもしれません。機会があれば、聴き比べしたいものです。知らない方が幸せかも😅
audio-technica AT-ART20
AT-ART9XIとAT-ART9XAの良いとこ取りしたとされるAT-ART20はイベントで一回聴いたことはあります。その時は大勢の人そして暗騒音も高く、AT-ART20の良さは分かりませんでしたので、機会あれば、環境の良い試聴室で聴いてみたいです。
DS Audio DS003
audio-technicaのカートリッジも気になる存在ですが、2022年6月に自宅試聴させていただいたDS Audioの第3世代のDS003も私の欲しいものリストに入れてあります。その時のブログに、
オルトフォン MC-A90 に比べて、DS Audio DS003 は微細な音の表現力が数段上です。下方リニアリティが高く、とても音楽性豊かに聴こえる
と書いています。DS003はDS001とは別物に仕上がっているようです。
FIDELIX MC-F1000
それから、FIDELIXのダイレクトカップルタイプの MC-F1000 も聴いてみたいカートリッジです。スタイラスが楕円針、チャンネルセパレーションの値が非公表な点が、私的には音を聴くまでは世間の評判をそのまま受け入れるのは躊躇します。
AT-ART9XA、AT-ART20、MC-F1000 、DS003 を比較試聴するイベントをショップで開催してくれれば、参加費を払ってでも参加したいくらいです。
AT-ART9XIに今のところ満足していますので、今すぐ新たなカートリッジの購入の予定はありませんが、心の準備はしておきます。
いつまでもあると思うな健康寿命、そんな格言はありませんでしたっけ😅