Myu Audio日記

オーディオ関連のブログです。

エルサウンドのフォノイコライザ EMC-2 の試聴

今回はエルサウンドEMC-2(MCカートリッジ用イコライザーアンプ)を我が家のアナログ環境で試聴しましたので、その結果を紹介します。

 

私は「ピュア・デジタル再生派」の称号をある方から頂いているくらい、デジタル再生重視の人間なのです。私はアナログ再生の万年初心者で、私の音の好みも一般的はないかもしれませんので、この試聴記は話半分でお読みください😀

 

 

試聴に用いた機器

EMC-2はVPIのアナログプレーヤー ARIES 3 Black Knightに取り付けたaudio-technicaのMCカートリッジ AT-OC9/IIIで使う予定でしたが、今回の試聴は比較試聴の環境が整ったノッティンガム Spacedeckで行うことにしました。

 

試聴に使ったアナログ再生関係の機器は下記の通りです。

  • カートリッジ:          audio-technica AT-ART9XI、DS Audio DS003
  • トーンアーム:          グランツ MH-10B、ロクサン TABRIZ-ZI
  • ターンテーブル:     ノッティンガム Spacedeck(モーターは非純正品)
  • フォノイコライザ:  エルサウンド EMC-2、Sutherland Hubble、DS Audio DS003(EQ)
  • ​その他:      バキューム式レコードスタビライザー(ユキム CVS-1)

 

 

 

我が家のアナログ再生の場合、デジタルチャンネルデバイダーを使っていますので、A/D変換およびD/A変換が発生します。「ピュア・アナログ再生派」の方からみると、良い音がするはずがない部類のアナログ再生の環境なのです😅

 

エルサウンド EMC-2の出力はAccuphaseのデジタルプリ(DC-330)でA/D変換され、デジタルチャンネルデバイダー(DF-55)にデジタルデータで送られ、4ウェイに分割された後D/A変換されAccpuhaseのパワーアンプにアナログ信号で送られます。使用したスピーカーシステムはウーファーソニー製(エンクロージャーは密閉型)、それ以外はScan-Speak製の楕円三兄弟です。

 



試聴結果

試聴の結果は私の好みが大きく反映されますので、私の嗜好を箇条書き(順不同)にしました。大した音も出していないのに大口を叩いていますが、志だけは高いということで、お許しください😅

  • スピーカーシステムが消えるのは最低条件で、できれば部屋が消えるくらいの3次元的な空間表現能力を求める
  • 最弱音域の音数(情報量)を重視、ホールの暗騒音未満の音も聴きたい
  • 鮮度感を重視、必要なら原音に含まれているであろう嫌な音も聴きたい
  • ハーモニーの中にもそれぞれの楽器・人が見えるような緻密な音が好み
  • 美音と称される「見えそうで見えない音」にはもどかしさを感じる
  • 音像が迫ってくるデフォルメされたような表現は苦手

 

試聴用音源

私はシステムの調整にはデジタル音源(マイ定点観測用音源)を用いますので、アナログ再生では試聴用の音源は決めていないのです。そこで、「新プロジェクトX~挑戦者たち~」の放映に伴い、中島みゆきの特集をやっていましたので、最初の音源として中島みゆきのレコードから「みんな去ってしまった」を楽曲や録音など無関係に手に取りました。中島みゆきのCD音源は私的には鳴らしづらい音源なのですが、久しぶりに聴くレコードの音源、なかなか良いのです。

 

比較試聴 

試聴は下記の組み合わせで行いました。 

 組み合わせ① audio-technica AT-ART9XI + グランツ MH-10B + Sutherland Hubble

 組み合わせ② DS Audio DS003 + ロクサン TABRIZ-ZI + DS003専用イコライザー

 組み合わせ③ audio-technica AT-ART9XI + グランツ MH-10B + エルサウンド EMC-2

 

1.中島みゆき「みんな去ってしまった」を聴いての印象

 audio-technica のカートリッジと Sutherland のフォノイコライザの組み合わせの音をリファレンスにして、私の試聴の感想を述べます。

 

 

audio-technica のカートリッジと エルサウンドのフォノイコライザの組み合わせの音は、他の2つの組み合わせより、頭一つ抜きんでたアナログ再生が私の印象です。立体的なボーカルと演奏が心地良い。ドラムス、ベース、ボーカル、キーボード、ギターの定位が明確に聴こえます。アコースティックギターの弱音が暗騒音の域まで聴こえ音楽に浸れます。バックコーラスが明瞭で空間に溶け込む感じも素晴らしい。Sutherlandの場合、ボーカルが少し平面的、演奏の低音域が少し薄く聴こえますが、音場感はエルサウンドと同様に素晴らしい。それから、エルサウンドのフォノイコライザは、カートリッジのカンチレバーの材料の違い(DS003はアルミニウム、AT-ART9XIはボロン)をしっかり表現できている印象です。

 

光カートリッジの組み合わせは、ドラムスの音に芯があり明瞭、密閉型のウーファーで聴いているからよりその良さが分かります。中高音はリファレンスに比べて音色が豊か、音場感より音像感が優って聴こえます。光カートリッジの出力レベルが高く、光用フォノイコライザのゲインは低く設定できるので、プリアンプのボリュームをほぼ全開にしても残留ノイズが気にならないのは嬉しいです。ジャズやロックの再生では、光カートリッジの良さが発揮されそう。

 

 

2.ブルガリア国立合唱団「Bulgarian Polyphony Vol.1」を聴いての印象

次に選んだのが私のお気に入りのレコードブルガリア国立合唱団「Bulgarian Polyphony Vol.1」です。

 

 

Bulgarian Polyphony Vol.1はスチューダーA-820をハーフ・インチテープ76cm/secでまわして録音された音源です。ブルガリアン・ボイスは2-4kHz 付近のエネルギー感が高く、その上倍音が多く40kHzに達し、この高調波は総勢29名による合唱でなければ出せないそうです。

 

この録音の凄いのは情報量と広大なサウンドステージです。そして、29名一人一人の声が広大なパノラマとして展開してくれたのがMCカートリッジの組み合わせでした。光カートリッジの組み合わせでは、合唱団が幾分中央よりでした。この音源には低音域はあまり含まれていませんので、Sutherland とエルサウンドのフォノイコライザの違いは私には聴き取れませんでした。両フォノイコライザとも、過度特性が良いようで29名による不協和音が濁ることなく美しく、そのレコード再生に我ながら惚れ惚れします。

 

 

3.グリモー「Credo」を聴いての印象

グリモーのクレドのレコードを購入したのが昨年10月でしたが、今回初めて盤に針を落とします。

 

この試聴に限ってはCDの音源と聴き比べてみました。CDの再生にはエソテリックのP0s(外部クロックも使用)を使いました。この音源の音数の多さからでしょうか、私の脳が処理に追いついていないようで、CDとアナログ再生の3つの組み合わせの違いが聴きとれない結果となりました。「ピュア・デジタル再生派」を名乗っている私としては、これはアナログ再生への最大の褒め言葉なのです。それなりの音量で再生しましたので、我が家のリスニングルームに音が溢れていました。

 

 

まとめ

エルサウンドのEMC-2の設計理念の一つ

  • のっぺりとした只綺麗なだけの音ではなく本来在る情報を極限まで再現したいが信条です。

私が求めている「鮮度感を重視、必要なら原音に含まれているであろう嫌な音も聴きたい」と相通じるものがあるような気がします。

 

エルサウンドのEMC-2の設計理念のもう一つ

  • 価格と音質は比例いたしません。

私が評価する項目の範囲内という条件は付きますが、有言実行されています。外装のデザインは大事な要素でしょうが、私はオーディオ機器はできれば隠したいタイプなのです。我が家ではデジタルチャンネルデバイダーとパワーアンプ7台は床下に配置しているくらいですから。私はセンスの良いデザインは大好きですので、自分でも一貫性がないことは認識しています。はい、見た目ももちろん大事です😅 

 

数百万のオーディオ機器が珍しくなくなった昨今、エルサウンドのようなコストパフォーマンスの高い製品がもっと認知され、ユーザーとして選択肢が増えれば、オーディオ愛好家のすそ野が広がるかもしれません。それから、audio-technicaのMCカートリッジ AT-ART9XI の音の良さ(+コストパフォーマンスの高さ)にも改めて気づかされました。私が昨年12月に5種類のカートリッジを聴き比べて選択しただけのことはあります。

 

今回の試聴の結果、エルサウンドのフォノイコライザ EMC-2はメインのシステムで使用することに決定です😀