Myu Audio日記

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新時代のレコード再生 & 「Phasemation試聴室」特別試聴会

先日、「Phasemation試聴室」特別試聴会に参加して、新時代に相応しいレコード再生を堪能してきました。特に、フラッグシップモデルでの組み合わせでは、フェーズメーションの新境地を聴いたように感じました。写真撮影とSNS等での紹介の了解を得ましたので試聴会の模様を紹介します。

 
フェーズメーションはオーディオショップ等で試聴会を多々開催されていますが、ショップの性質上必ずしも室内音響が十分でない場所での試聴となります。しかし、今回は普段非公開のフェーズメーションの試聴室を一般開放しての試聴会ですので期待は膨らみます。
 
フェーズメーションの試聴室は石井伸一郎氏が設計・監修され、参加者6名限定の試聴会には居心地が良く、最適なサイズと感じました。天井高が6m弱もあり、非常に贅沢な音響空間となっています。天井が視界に入らない空間での音楽再生時には、五感のすべてが広いサウンドステージを受け入れる準備をしてくれるようです。残響時間は今回のように音楽を楽しむ目的には丁度よく感じました。
 
 
Phasemationの試聴室 - 贅沢な音響空間
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*実際はもっと明るい部屋です。下手な写真ですみません
 
 

試聴会では下記の機器が使われました。基本的にはフェーズメーションの機器で構成されていますが、音の良さで評判のChordのDAC Dave、そして、高価ですが費用対効果の高い音場型スピーカーの代表格 B&W 800D3 が使われました。 
 
  ターンテーブル:    Air Force One
  トーンアーム:       Glanz、MH-124S
  MCカートリッジ:    PP-2000
  MC昇圧トランス:   T-2000
  フォノアンプ:        EA-1000
  コントローラー:     CM-2000、CA-1000
  パワーアンプ:      MA-2000
  CDトランスポート: Phase Tech、CT-1
  DAC:                 Chord Dave
  スピーカー:         B&W 800D3
 
 
上流の機器
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アナログプレーヤーは、これ以上はないと思われる TechDAS のAir Force One です。Air Force One はデザインと仕上げの質感がとても上品で、私にとっては憧れのプレーヤーです。
 
気になるトーンアームはスタティックバランス型の Glanz MH-124S です。このトーンアームの剛性と質量がフェーズメーションのカートリッジの良さを生かしてくれるとのことでした。
 
TechDAS Air Force One と Glanz MH-124S
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カートリッジはPP-2000です。前作のPP-1000の磁器回路などの見直しによって微弱な音の再現性を一層向上できたそうです。このPP-2000の空間表現の能力は素晴らしいものがあります。上記のプレーヤーとトーンアームはかなり高価で、なかなか一般の人は購入できませんので、費用対効果の観点から、レコードから直接信号を取り出すカートリッジにはそれなりの予算を配分するのが良さそうです。
 
私のリクエストで下位モデルのPP-500を試聴会終了間際に掛けて頂きましたが、残念ながらPP-2000の時のような広大な音場空間の再現はなりませんでした。資本主義経済では、お金は正直のようです
 
PP-2000
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フォノアンプはモノラル構成のEA-1000です。半導体タイプのEA-300との聴き比べもありましたが、EA-1000の良さが際立っていましたが、上には上がありました。新時代のアナログ再生は、耳には心地良いですが、懐には優しくなさそうです。
 
フォノアンプのEA-1000にはMCトランスも内蔵されていますが、MC昇圧トランスをT-2000に変えることによって、微小信号の表現力が増して、まるで16ビットが24ビットの音源に置き換わった程の変化がありました。これは、新開発の極薄スーパーマロイ材と巻き線にPCーTriple Cを採用した結果だそうです。SN比の高い音響空間での試聴でしたので、この効果がより感じられました。

EA-1000
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T-2000
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コントローラーにはCA-1000とCM-2000の2種類が使われました。CA-1000 は3筐体と贅をつくした構成となっています。フェーズメーションの技術を生して、音量調整にはトランスと抵抗を併用したハイブリッド・アッテネーター回路が採用されています。アンプ部のゲインは標準で12dBですが、+/-6dBで可変できますので、能率の高いスピーカーを使う場合などは重宝しそうです。
 

 

CA-1000
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CM-2000はバランス接続に対応したパッシブアッテネーター式コントローラーです。音量調整にはCA-1000と同じようなトランスと抵抗を併用したハイブリッド・アッテネーター回路が採用されていますが、新規に開発されたトランスを最適にマウントすることによって、「未体験の高鮮度、緻密で広大な音場空間の再現」が得られたそうです。
 
ほとんどのフォノアンプはMC入力の場合でも60dB近いゲインがありますので、コントロールアンプでゲインを稼ぐ必要はありません。デジタル再生でDACを使った場合でも同様で、音量という観点からはゲインは不要です。
 
パッシブアッテネーター式コントローラーの場合、一般的には高い出力インピーダンスがネックになりますが、CM-2000はトランスと抵抗を併用することによって、出力インピーダンスは250Ω以下に抑えられています。ちなみに、真空管アンプを搭載したCA-1000の出力インピーダンスは100Ω以下となっています。
 
CM-2000
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パワーアンプはモノラル構成のMA-2000です。300Bを2個使いしたトランス結合のシングルアンプで25Wのパワーを得ています。ルンダール社製のトランスの2次側の巻き線を独自の使い方と最適化されたマウント方法によって、中高音の鮮度と厚みのある低音が得られたそうです。
 
MA-2000
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スピーカーはオーディオが好きな方なら一度は聴いたことがるB&W 800D3です。モノラル構成の真空管アンプとはいえ、25Wのアンプで800D3を広い空間で鳴らしきるか心配していましたが、危惧に終わりました。もちろん、低域に関しては数百ワットクラスでダンピングファクターの高いパワーアンプで駆動したような出音は無理でしたが、中高音の鮮度感の良さは際立っていました。

 

B&W 800D3
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フェーズメーションの試聴室には、ホーンタイプで能率の高いJBLのエベレストも用意されていましたが、音場感を求める私としては、サウンドステージの広いB&W 800D3が使われたことが有難かったです。
 
 
試聴会で使われたアナログレコードの一部です。参加者に機器の良さが十分に伝わるように名盤が選ばれたようです。
 
左上のレコードはテオドール・クルレンツィス指揮のマーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」です。このレコードは昨年レコード・アカデミー賞受賞作品で、「音楽の友」の読者と執筆陣の選んだ2018年ベスト・ディスク トップ30にも選ばれています。つい最近ですが、録音の良さに期待して購入したCDと音源が同じで嬉しくなります。
 
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以下は、私の全くの個人的な好み(広いサウンドステージと立体感のある奥行感)を反映した感想です。ボーカル曲をウィスパーボイスの如くコンパクトな音像表現が好みの方や密度感のあるジャズ再生を求められている方は、異なる印象を持たれることでしょうが、「音は人なり」ということでお許し願いますね。
 
ダイアナ・クラールのWALLFLOWERでは、フォノアンプのEA-1000内蔵のMCトランスと外部トランスのT-2000の両方で聴くことができ、ダイアナ・クラールの唇の動きが見えるようで、T-2000の微小信号の分解能の能力の高さを感じます。EA-1000内蔵のMCトランスでは、分解能を意識させないスムースな再生ですので、こちらの方が好ましく感じられる方も居られるのでしょう。
 
EA-1000内蔵のMCトランスと外部トランスのT-2000の違いは、エリック・クラプトンのライブ盤 Unplugged でも良く分かります。T-2000では、拍手とギターのピックの音の分離感と立ち上がり感が素晴らしく会場の熱気が伝わってきます。
 
コントローラーのCA-1000とCM-2000の違いは特に音場感の広さです。CM-2000は最小限の吟味された部品が最適な方法でマウントされているようですので、鮮度の高い、パノラマ・ビュー的な音場空間が味わえます。CA-1000でもCM-2000と比較しない限り、何ら不満を抱かないサウンドステージですが、CM-2000の音場空間の広さを知ってしまうと癖になりそうです。

CA-1000の音場感
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CM-2000のパノラマ・ビュー的な音場空間
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今回の「Phasemation試聴室」特別試聴会で特に印象に残ったのは、①カートリッジ PP-2000、②MC昇圧トランス T-2000、③コントローラー CM-2000 でした。これらを自宅試聴したら戻れない橋を渡りそうですので、家庭平和のためにここは我慢ですが、もしかしたらを考えて妻にカートリッジは消耗品でPP-2000の定価は44万円で、現在使っているオルトフォン MC-A90と同額と告白しました。幸い、妻からのヘッドロックと廻し蹴りはありませんでした
 
今回の試聴会で、環境(機器と調整)が整えば、レコードからハイレゾ音源に劣らぬような再生ができることを体験することができました。我が家のアナログはまだまだ初心者レベルのようです。
 
最後に、このように意義のある試聴会を開催してくださいましたフェーズメーションの関係者に感謝しています。そして、私の趣味を理解して快く送り出してくれた妻にも感謝です。