最近購入したアデルの「ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール」を聴いていたら定位が乱れる音域があり、スピーカーを少し内振りにしたら良くなりました。以前から気にはなっていたのですが、スピーカーユニットの繫がりの不備を疑っていたのですが、フラッターエコーが主な要因だったようです。
音楽マニアでしたら、この良くなった状態で音楽を楽しまれるのでしょうが、ここで止めれないのがオーディオマニアの性です。
今回問題となったフラッターエコーとは直接的には関係がないですが、定在波の影響を低減するスピーカーの配置について自分自身の備忘録として纏めてみました。スピーカーの配置は定在波以外にも考慮しなければいけない要素は沢山ありますので、スピーカー配置の第一ステップと捉えています。
スピーカーの配置法で一番有名 (しかし実現している人は少ない?) なのはカルダス(Cardas)式セッティングでしょうか。
カルダス式設置法は、”The Golden Cuboid listening room is 10’H x 16’W x 26’L (Read 10.000 x 16.18033989... x 26.18033989...”が前提になっていると私は理解しています。この前提の基に、定在波のピークおよびデップの影響が最小限になるように、部屋の幅を基準にしてスピーカーの配置を決めています。
カルダス氏が奨励する"夢の直方体のリスニングルーム"のサイズは、馴染みのあるメートルに換算しますと 高さ 3.048m 幅 4.932m 奥行 7.980m となります。奥行きが幅の1.625倍要求されているのが特徴で、この方式を採用するのを難しくしています。
"夢の直方体のリスニングルーム"とカルダス式セッティング
カルダス氏奨励の"夢の直方体のリスニングルーム"で、カルダス式セッティングでスピーカーを配置しますと下記の様な特性となります。部屋(壁)の反射率はすべて0.8、ウーファーの高さは約60cm、視聴者の高さは約90㎝の条件です。カルダス氏はリスニング後方にかなりの吸音材を置くことを奨励されていますが、今回は他の配置法と相対比較するのが目的ですので、この条件にしました。
さすが、"夢の直方体のリスニングルーム"です。定在波のピークとディップが上手く抑えられています。
カルダス式セッティング StndWave2でのシミュレーション結果
我が家の第2リビングルーム(高さ 3.500m 幅 4.360m 奥行 5.726m)に無理やりカルダス式セッティングを当て嵌めてみました。
"第2リビングルーム"とカルダス式セッティングもどき
壁からスピーカーの面まで1.9m
カルダス氏奨励の部屋の比率から程遠い我が家の第2リビングルームでは150Hz付近にデッップが発生しています。幸い100Hz以下の帯域は上記のカルダス氏奨励の"夢の直方体のリスニングルーム"と遜色のない結果となっています。
"第2リビングルーム"とカルダス式セッティングもどきのシミュレーション結果
次は、ヴァンダースティーン(Vandersteen)式セッティングです。この方式は”奇数分割”式とも呼ばれているようですので、今回は分かりやすいこちらの名前を使います。
”奇数分割”式セッティングは、”今ある部屋”で定在波の影響をなるべく抑える考え方が基になっていますので、現実的なアプローチです。我が家で採用できそうな奇数である1/5と1/3を検討しました。この方式は天井高による定在波の影響が加味されていませんので、実際は試聴しながらの微調整が必要となります。
”奇数分割”式セッティング
我が家の第2リビングルームでの結果です。1/3地点での結果(赤)は、上記の"第2リビングルーム"とカルダス式セッティングもどきと似たような結果となりました。1/5地点では、150Hz付近のディップが少し分散しているのが分かります。我が家の場合、第2リビングルームとしての機能も必要ですのでスピーカーが壁から1.145m、スピーカーと試聴位置間が約3mの1/5地点が良さそうです。1/3地点の特性は魅力的ですが、スピーカーの間隔が狭く、部屋の中央付近に迫ってきますので、我が家の部屋の広さでは圧迫感を感じます。広い部屋ではこの1/3地点が良さそうです。
"第2リビングルーム"と”奇数分割”式セッティングのシミュレーション結果
石井伸一郎氏が推奨されている部屋の一つ(高さ 3,920 幅 4,560 奥行 5,400)に”奇数分割”式セッティングを当て嵌めてみたのが下記の結果です。1/3地点では60Hz付近に少しディップがありますが、1/5地点のは、カルダス氏奨励の"夢の直方体のリスニングルーム"とカルダス式セッティングと同様素晴らしい結果です。
"石井式リスニングルーム"と”奇数分割”式セッティングのシミュレーション結果
周波数特性をLOGスケールで表しますと、低域の特性のみをズームして見る感じになり、定在波の恐怖を必要以上に煽っているケースもありますが、私は定在波はあまり気にならないタイプです。ただし、壁の振動はまた別の問題です。私には指向性の広いスピーカーでより顕著になる音像定位が乱れるフラッターエコーはとても気になります。
最近、ダイナミックオーディオのHALとフェーズメーションの試聴室での試聴会に参加したことによって、私の経験値も増し、今まで以上に私にとっての「気持ちの良い音・音楽が楽しめる音」のイメージが出来ています。
*5月9日 9時40分 一部加筆修正しました。