Myu Audio日記

オーディオ関連のブログです。

インピーダンス測定結果 - エンクロージャーの定在波による影響

「スピーカーといえば、スピーカーユニットのこと」と思う人は、富士山を海抜0mから登山を始めるような人種かもしれませんね。音感ゼロの私は、地図とコンパスを適切に使い、青木ヶ原樹海で迷子にならないように注意しなければいけません。

 

今回のブログもスピーカーユニットがテーマです。2月20日のブログ「Accutonのミッドバスのインピーダンスの測定結果(後編)」で、ミッドのユニットのインピーダンス測定結果にエンクロージャーの定在波による影響が出ている可能性があると紹介しました。

 

Before

2月20日時点では、エンクロージャーの胴の周りに薄い吸音材を貼っていまして、インピーダンスの測定では、400Hzと700Hz付近に定在波の影響と思われるゆるやかなピークが観測されました。

 

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After

今回は、エンクロージャーの奥行き方向の定在波の影響を低減させる目的で、エンクロージャーの中央に吸音材を追加しました。使用した吸音材はリスニングルームの防音工事の時の残りもので、20mm厚の吸音ウールと呼ばれ防弾チョッキにも使われているものです。吸音材をエンクロージャーの中央部に配置する案は、自作スピーカー・マスターブックに記載されていました😀

 

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下記の図で、青はBefore(2月20日)の結果、緑は今回エンクロージャーの中央に吸音材を追加した時の結果です。吸音材の追加で、最低共振周波数(55Hz) のピークの値が10Ω程下がっているのが分かります。

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エンクロージャーの中央部に吸音材を追加することによって400Hz付近のピークがほぼ無視できるレベルまで減少しいます。450Hz の小さなピークは、エッジと振動板の動きによるユニット固有の現象のようです(間違っているかも😅)。

 

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吸音材を追加したことによって、インピーダンス特性は改善されましたが、音の鮮度感が無くなる可能性もありますので最終的には試聴して判断するのはもちろんのことです。

 

教本に載っていること(バッフルステップ補正、エンクロージャー内の定在波の処理など)を自分で体感すると、知識が自分のものになっていきますね。

 

富士山の5合目までは、車やバスで行って登山を始めると頂上には早く・確実にたどり着くのでしょうが、0合目から5合目間の道のりは長いですが緩やかですので、登山仲間との会話や周辺の景色を楽しみながら 3776m の頂きを目指します😀

 

 

ミッドのバッフルステップの補正(シミュレーション編)

ステレオサウンド No. 175(2010年7夏号)の中で、菅野沖彦氏が述べられている言葉に、私も同じ思いです。

 

「スピーカーシステムとスピーカーという名称は、私の意識の中では異なるものとして存在する。一般にスピーカーとはスピーカーシステムのことを指すが、私にとってはスピーカーとは「システム」ではなく、スピーカーユニットのことなのである。」

 

 

今回もスピーカーユニットの記事で恐縮ですが、ミッドの帯域で使用しているAccuton C90-6-724 のバッフルの影響を調べました。

 

① Artaでの音響測定結果@1m

シミュレーションを始める前に、定期点検を兼ねてユニットの周波数特性を測定しました。フラットな特性ではありませんが左右の特性が良く揃っています。

 

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② データシート vs. 現実

下記の図の赤線はAccutonのデータシートのグラフを数値化した周波数特性で100 - 5kHz の帯域はほぼフラットです。青線は太鼓型エンクロージャーにマウントした時の特性で、1 - 3kHz 間のゆるやかなピークがあります。今まで、その理由が理解できていませんで、ユニットの個体差やエンクロージャーの設計の未熟さを疑ったりしていました。

(注)実測した特性と比較しやすいように、データシートの特性を4dBレベルを下げて表示してあります。

 

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③ バッフルステップのシミュレーションの結果

下記はバッフルステップのシミュレーションの結果です。青線は上の図と同じで小型の太鼓型エンクロージャーにマウントした時の特性で、1 - 3kHz 間の緩やかなピークがあります。赤線はバッフルの影響をシミュレーションしたものです。両特性はそれなりに合致しているように、私には思えますが如何でしょうか。

 

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④ バッフルステップ補正の効果(シミュレーション)

下記は実際に音響測定した特性(青線)に、 VituixCAD上でバッフルステップ補正を掛けた時の結果(赤線)です。バッフルステップ補正の回路は、抵抗2本、コンデンサ1個、インダクター1個を組み合わせたシンプルな回路ですが、その効果は侮れません。

 

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フラットな特性のユニットでも小さなバッフルのエンクロージャーに搭載すると、音波の回折現象の影響で、軸上の周波数特性に乱れが生じます。しかしながら、スピーカーユニットから発せられるエネルギーの総量が変わるわけではありませんので、バッフルステップ補正にあまり拘らなくても良いのかもしれませんが、軸上での特性も整えたシステムで聴いてみたい気持ちが強く、スピーカーの勉強に励んでいます。

 

軸上の特性が良いに越したことはありませんが、私の感覚(直感)は4π空間での総合的な特性が重要と感じています。しかしながら、今回の一連のシミュレーションを行ってみて、どこをどういじれば特性がどのように変化するのか、理解できたのは収穫でした。最終的な判断の基準は、自分の好きな音楽をどう表現するかですよね。

 

 

バッフルステップ補正ー音響測定の結果(ミッドバス編)

USBオーディオインターフェースとパワーアンプ間にバッフルステップの補正回路を挿入して、その効果の程を確かめてみました。補正回路と言っても抵抗2本、コンデンサ1個で実験用でしたらチョチョイのチョイで出来ちゃいます😀 

 

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下記が Arta を使っての音響測定の結果です。青線はバスのバッフルステップ補正なし、赤線はバスのバッフルステップ補正ありです。ミッドバスのユニットは床から70cmですので、床からの反射の影響を避けて表示しているため、200Hz以下の測定精度は低いですが、ほぼシミュレーションの結果と合致しています。

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上記の実験結果、ミッドバスのユニットはなんとか手懐けられそうなのが確認できました。

 

次のステップとして、ミッドのユニット Acctuon C90-6-724 のシミュレーションしながら音響測定を行っているのですが、音響特性の結果に理解しきれていないところがあり、どうしたものか(楽しみながら😅)悩んでいるところです。

 

2015年の朝ドラ「花子とアン」で私の心の残ったセリフ、「曲がり角を曲がった先に何があるのかはわからないの。でも、きっといちばん良いものにちがいないと思うの。」を思い出します。7年前の話、だれも覚えて居られないですよね。

 

太鼓型スピーカーシステムの調整が上手くいった時、どんな素敵な音楽再生がまっているか楽しみです。曲がり角の先は、曲がってみないとわかりません。

 

 

VituixCADでミッドバスのシミュレーション by 初心者

VituixCADの使い方が理解できつつあります。マニュアルやネットの情報を読んたら、まずやってみるのがこのようなシミュレーションソフトウェアの使い方を習得するには早道のようです。

 

自分用のマニュアルを作成しながら、作業を進めました。マニュアルを作っておかないと、半年後にはほとんど使い方を忘れていますからね😅

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シミュレーションの途中でいろいろなファイルを作成しますので、どれがなんのためのファイルなのか分からなくなります。自分用のマニュアルを作成しながら下記の作業をすすめました。その結果、なんとかネットワークの設計を終えて、求めている最終の周波数特性が得られました。

 

主なVituixCADでの手順

  1. データシートの周波数特性とインピーダンス特性のグラフをVituixCADに取り込む
  2. エンクロージャーの容積を決定する
  3. バッフルのサイズを決め、バッフルステップのデータを作成する
  4. Near Field と Far Field データを合成する
  5. ネットワークを設計する

 

下記の画面では最後の作業であるネットワークの設計を行っている例です。初心者にとっては本当はここまでたどり着くのが大変なのですが。

ネットワークの設計と言っても、我が家はマルチアンプ方式を採用しているので、パワーアンプとスピーカー間に入る低インピーダンスに対応したLCタイプのネットワークは不要なのですが、そこは初心者の勉強だと思いお付き合いください。

 

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下記はミッドバスのシミュレーションで得られた周波数特性の例です。橙線はデータシートの特性、緑線は太鼓型エンクロージャーに搭載した時の特性、青線はバッフルステップを補正した時の特性です。我が家の太鼓型エンクロージャーのバッフルは必要最小限の大きさですので、バッフルステップ補正を適切に行えば、周波数特性はかなりフラットにできることが実感できました。これくらいフラットな特性ですと、チャンネルデバイダーでの選択肢が増えて設定も楽にできそうです😀

 

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上記のバッフルステップ補正をかけた特性のものを、チャンネルデバイダーの設定を560Hz・24dB/Octにして得られた周波数特性が下記の図の赤線になります。音の良さは聴いて判断するしかありませんが、やはり特性があるべき姿になると気持ちが良いですね。精神的な安心感が得られるのは大事です。

 

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下記はインピーダンス特性です。青線はデータシートのフリーエアでの特性、赤線は今回VituixCADのシミュレーションから得られた特性、緑線は先日Limpで実際に測定した結果です。

Limpの結果は太鼓型エンクロージャーに入っている吸音材の影響で、最低共振周波数のピーク値がシミュレーションの結果より低くなっています。共振周波数のずれは、太鼓型エンクロージャーの正確な容積が分かりませんので、シミュレーションで使った値との誤差だと思います。いずれにしても、このシミュレーションの結果には満足です。

 

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まだまだ、VituixCADが持つ機能の数10%程しかまだ理解できていないですが、使い方が少し分かってきました。VituixCADでの一連の作業の流れが理解できるまでが大変でした。

 

今回は、ミッドバスのデータシートの特性を基に解析しましたので、近々、疑似無響室測定(Far Field)と近接測定(Near Field)を行い、それで得られた結果を基にシミュレーションする予定です。

 

下記の自作スピーカー・マスターブックが出版されなければ、私のスピーカーの勉強はなかったと思います。著者の方々には感謝の言葉しかありません。

 

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中音と高音ユニットのインピーダンスの測定結果

Limp の使い方にも慣れてきましたので、中音用ユニット(C90-6-724)と高音用ユニット(C25-6-158)のインピーダンスを測定しました。

 

下記は中音用ユニットC90-6-724のインピーダンスの測定の結果です。L-chとR-chのユニット差は少ないですが、Accutonのデータシートの値とは約0.8Ω異なります。hificompass での測定結果も我が家の結果に近い値でしたので、少し安心しています。

 

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下記は高音用ユニットC25-6-158のインピーダンスの測定の結果です。L-chとR-chのユニット差は少ないですが、Accutonのデータシートの値とは約0.5Ω異なります。このユニットも太鼓型エンクロージャーに入ってはいますが、バックチャンバー付きタイプですので、最低共振周波数は両者ともほとんど同じです。

 

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このように、スピーカーの勉強(座学と実験)楽しくやっています。現役時代はこのような余裕はありませんでしたが、今は趣味に没頭できます。

 

Accutonのミッドバスのインピーダンスの測定結果(後編)

下記は先日紹介しましたAccutonのミッドバスC220-6-222を約26リットルの密閉型の太鼓型エンクロージャーに搭載した時のインピーダンスの測定結果です。

 

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上記の縦軸のスケールでは完璧?に見えますが、スケールを拡大しますと400Hzと700Hz付近の特性に少しですが乱れが観測されました。これがどれだけ音に影響するかは分かりませんが、その原因が気になります。

 

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そこで、VituixCAD を使ってエンクロージャーの定在波をシミュレーションしました。残念ながら、太鼓型エンクロージャーの形状はサポートされていませんので、近似的に直方体にしてシミュレーションしたのが下記になります。

 

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Limp で測定したインピーダンスと VituixCAD のシミュレーションで得られたエンクロージャーの定在波を重ね合わせてみました。私には関連性があるように思えるのですが、どうなのでしょうね?それから、450Hz付近の小さなピークは定在波ではなく別物ようような気がいます。

 

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上記の対策として、現状の26リットルの太鼓型エンクロージャー(図左)に図右のような加工を施して、奥行き方向による定在波の低減挑戦にするのも面白そうな気がしてきました。それによって、容積も2Lほど減らせれば、Accutonの奨励値(24L, Q=0.5)に近づきます。またもや、私の妄想癖が出てしまいましたね。

 

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次回は中音と高音ユニットのインピーダンスの測定結果を紹介する予定です。

 

Accutonのミッドバスのインピーダンスの測定結果(前編)

Limp を使ってAccutonのミッドバスC220-6-222のインピーダンスを測定しました。緑の線が太鼓型エンクロージャーに搭載したもの、黄色の線は Accuton のデータシートからVituizCADを使って数値化して、Limpに取り込んだものです。データシートはフリーエア時の特性ですので、密閉型の太鼓型エンクロージャーとは共振周波数が異なりますが、それ以上の帯域では両者の特性はピッタリ合っています。それから、L-chとR-chの特性の差が非常に少ないことが分かったことも嬉しいです。こんな程度で喜んでいる自作スピーカーの初心者です😀

 

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C220-6-222 はもともとソニーのホーンシステム用のミッドバスとして、口径が約20cm、ネオジムマグネット、見た目が良いとの理由だけで、T/Sパラメータのことなど何も考えずに選びました。この時(2011年)は山本音響のホーンを使っていました。今となっては、懐かしい思い出です。

 

2011年3月 @旧リスニングルーム

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下記はデータシートに記載されているC220-6-222のエンクロージャーの奨励値です。正直言って、今までこのような情報を気にしたことはありませんでした。理由は私の特殊な事情によるものです。

 

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事情その①

ソニーのホーンシステムの時は、既存のウーファーのエンクロージャー内に無理やりミッドバス用のエンクロージャーを追加して取り付けましたので、その容積を考慮する余裕はありませんでした。これは2011年のことです。この時のエンクロージャーの容積はおそらく15Lくらいだったと思います。使用帯域は200から800Hzまででしたので、あまりエンクロージャーの容積は気にする必要もありませんでした。

 

イメージ 1

 

 

事情その②

それから、太鼓型エンクロージャーを思いついたのが2013年になります。この時は和鼓の胴のみ、それも太鼓に仕上げる前の状態、を探していましたので、その大きさ(容積)はあまり選択肢はありませんでした。下記の写真右のような個体が入手できたこと自体、自分で驚いたくらいです。そして、Woody&Allenさんに仕上げて貰ったのが写真左のものになります。この頃は、僕もWoody&Allenさんも若かったですね。今はその時のような体力と情熱はないかも。

 

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ちょっと昔話が長くなっていまいましたので😅、C220-6-222のエンクロージャーの容積の話は次回に続きます。