Myu Audio日記

オーディオ関連のブログです。

ミッドのバッフルステップの補正(シミュレーション編)

ステレオサウンド No. 175(2010年7夏号)の中で、菅野沖彦氏が述べられている言葉に、私も同じ思いです。

 

「スピーカーシステムとスピーカーという名称は、私の意識の中では異なるものとして存在する。一般にスピーカーとはスピーカーシステムのことを指すが、私にとってはスピーカーとは「システム」ではなく、スピーカーユニットのことなのである。」

 

 

今回もスピーカーユニットの記事で恐縮ですが、ミッドの帯域で使用しているAccuton C90-6-724 のバッフルの影響を調べました。

 

① Artaでの音響測定結果@1m

シミュレーションを始める前に、定期点検を兼ねてユニットの周波数特性を測定しました。フラットな特性ではありませんが左右の特性が良く揃っています。

 

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② データシート vs. 現実

下記の図の赤線はAccutonのデータシートのグラフを数値化した周波数特性で100 - 5kHz の帯域はほぼフラットです。青線は太鼓型エンクロージャーにマウントした時の特性で、1 - 3kHz 間のゆるやかなピークがあります。今まで、その理由が理解できていませんで、ユニットの個体差やエンクロージャーの設計の未熟さを疑ったりしていました。

(注)実測した特性と比較しやすいように、データシートの特性を4dBレベルを下げて表示してあります。

 

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③ バッフルステップのシミュレーションの結果

下記はバッフルステップのシミュレーションの結果です。青線は上の図と同じで小型の太鼓型エンクロージャーにマウントした時の特性で、1 - 3kHz 間の緩やかなピークがあります。赤線はバッフルの影響をシミュレーションしたものです。両特性はそれなりに合致しているように、私には思えますが如何でしょうか。

 

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④ バッフルステップ補正の効果(シミュレーション)

下記は実際に音響測定した特性(青線)に、 VituixCAD上でバッフルステップ補正を掛けた時の結果(赤線)です。バッフルステップ補正の回路は、抵抗2本、コンデンサ1個、インダクター1個を組み合わせたシンプルな回路ですが、その効果は侮れません。

 

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フラットな特性のユニットでも小さなバッフルのエンクロージャーに搭載すると、音波の回折現象の影響で、軸上の周波数特性に乱れが生じます。しかしながら、スピーカーユニットから発せられるエネルギーの総量が変わるわけではありませんので、バッフルステップ補正にあまり拘らなくても良いのかもしれませんが、軸上での特性も整えたシステムで聴いてみたい気持ちが強く、スピーカーの勉強に励んでいます。

 

軸上の特性が良いに越したことはありませんが、私の感覚(直感)は4π空間での総合的な特性が重要と感じています。しかしながら、今回の一連のシミュレーションを行ってみて、どこをどういじれば特性がどのように変化するのか、理解できたのは収穫でした。最終的な判断の基準は、自分の好きな音楽をどう表現するかですよね。