Myu Audio日記

オーディオ関連のブログです。

リスングルーム遮音工事のまとめ

昨年秋から和室をリフォームしてリスニングルームを造っています。遮音工事は終わりましたが、内装はまだ未完成の状態ですが、私の体験が少しでも参考になればと思い紹介しま す。この記事は昨年書いたリスングルーム関係の記事を備忘録として一つに纏めたものです。

1.リスニングルームの概要
部屋:和室、広縁、押入れ2か所を潰してワンルームにしてリスニングルームとして使う。
環境:定住率の高い静かな別荘地
設計:防音の専門家に依頼
施工:地元(静岡県伊東市)の大工さんに依頼、ただし吸音材の設置はDIY
資材:特別仕様の防音材は防音の専門家、電気関係は施主支給、その他は大工さんが手配する。
工期
  部屋の解体: 2015年7月
  遮音工事: 2015年10-11月
  内壁・内装工事: 2016年夏予定
方針
  遮音レベルはD-45を目標とする。残響時間はクラッシク鑑賞に適した0.5秒前後を目標にする。
  まず遮音工事を行い部屋の特性を確認する。
  内壁を含む調音関係の設計・施工は遮音工事完了後十分に音楽を聴いてから行う。
  内窓と2重ドアは内装工事時に行う。
  フラッターエコー低減のため、左右壁面は約3度以上傾け、天井は5寸勾配の屋根を生かす。
  遮音の観点からオーディオルーム専用の分電盤を設置する。
参考資料
  サーロジックホームページ
  アコーステックエンジニアリングホームページ
  加銅鉄平著: リスニングルームの設計と製作例
  石井伸一郎著: リスニングルームの音響学


2.部屋の特徴
リスニングルームは8畳の和室、広縁そして押入れ2か所を潰してワンルームにして使います。この部屋の良いところは、他の部屋と接している面がまったく無いですので、遮音に関してかなり有利です。床面積は25㎡、天井は5寸勾配の傾斜天井で平均3.3mの高さです。石井伸一郎氏が推奨さ れている部屋の最適比率は 1:0.845:0.725ですが、我が家の場合、1.0:0.77:0.60ですのでどんな結果になるのでしょうか。傾斜天井は定在波とフラッターエ コーの低減に貢献してくれるはずです。そして、天井が高いのは音響的に効果ありますが、視覚的にも解放感が味わえますので、部屋の出来上がりに期待しています。

リスニングルームへのドアはスピーカーを縦置きと横置きの両方が試せるように配置してあります。西側にあるサッシ窓は遮音の観点からは潰して壁に した方が良いのですが、素晴らしい景色ですのでの残すことにいました。近い将来ウッドデッキを設置して、(妻にも気付かれないように?)このサッ シ窓から大型機器の搬入もできるようにします。

リフォーム前の間取り図
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リフォーム前の写真
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リフォーム後のリスニングルームのサイズ
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3.部屋の解体
下記は旧和室を解体している時の写真です。家の造りは音響的にはあまり評判の良く無い2X4ですが、無い袖は振れません。地元の大工さんに部屋 の解体を7月にして貰い、遮音工事は10月に開始しました。その間に遮音工事の仕様を決定して防音材の手配をしました。解体した部屋を実際見ながら、壁や柱の補強を検討するのは、リフォームの場合大事な作業の一つです。

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5寸勾配の天井
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4.防音工事
防音工事の設計は個人で営業されている専門家に依頼しました。当初は自分で書物やネットの情報を参考にして、大工さんに指示する計画でしたが、 ここは経験豊かな専門家にコンサルタントとしてお願いしたほうが良いと思い直しました。直接お会いして今回の工事の概要を説明して、専門家より特 注品の防音材等を紹介して頂きました。高密度のグラスウール位しか知りませんでしたので、専門家からの情報は大変参考になりました。大変費用対効 果の高いコンサルティングだったと思っています。防音設計は数回のメール のやり取りで決定しました。特注品の防音材の手配もその専門家の方にお願いしました。

壁は既設の石膏ボードに吸音ウール、ロックウール、強化石膏ボード、アスファルトマット、 吸音ゴムマット、強化石膏ボードを追加して遮音性能を高めています。下記は天井はロックウール、壁は吸音ウールを貼った時の写真です。良くリスニングルーム設計の本で奨励されているグラスウール(32kg/㎥)は、今回は使用していません。理由は吸音ウールとロッ クウールの組み合わせの方が、遮音に必要な壁厚が薄くできます。ただし、少々割高な施工方法となります。

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壁の強度を上げる為に既設のたて枠に追加でもう一本足しました。たて枠間に約60cm間隔でよこ枠を追加しました。よこ枠の角材は精度良くカット して、金づちで叩いていれる必要があります。これで、たて枠の振動がかなり低減されました。吸音ウールとロックウールをそれぞれの枠の寸法より少 し大き目にカットして枠内に押し込んで取付けます。それぞれの升目の寸法は異なりますので、一つずつ寸法と取って遮音材をカットするのは根気のいる作業ですので、大工さんにお願いするより時間のある方は自分でやれば費用(約2週間の大工さんの工賃)を抑えられます。

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吸音ウールとロックウールを貼り終えたら石膏ボード間にアスファルトマットと吸音ゴムマットをつなぎ目が重ならないように貼っていきます。つなぎ 目には気密テープを貼り遮音性能の劣化を防ぎます。

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アスファルトマットと吸音ゴムマットの上は12mm厚の強化石膏ボード(吉野石膏タイガーボード・タイプZ) をつなぎ目が十字にならないように配置して貼ります。サッシ窓は遮音性能を考慮して3mmのガラス+9mmのエア+3mmのガ ラスの組み合わせの物をいれました。内装の工事の時に気密性の高い内窓を追加する予定です。

強化石膏ボードと気密サッシ窓
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ドアは大建工業の簡易型防音ドア(アドバンス)を入れました。聴感上の遮音レベルは一般的なドアより少しマシといった感じですので、内壁を造る時 にもう一つ内ドアを追加する予定です。より遮音レベルの高い防音ドアの導入も考えましたが、費用対効果を考えて簡易ドア2個+空気層の案を採用し ました。内ドアは内装または調音を考慮した仕上げとする予定です。

簡易型防音ドアの遮音性能
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天井高が最大4mありますので、冷暖房の効率化の為シーリングファン2台を取り付けます。照明付のシーリングファンは高価ですが、照明無しのシー リングファンは一万円前後で購入できます。動作音は個体差も有るようですが、気にならない位小さいです。2か月程使用してみて感じるのは、部屋の 空気を循環させるのは気持ち良いです。

シーリングファン
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昨年12月から強化石膏ボード剥き出しの状態で音楽を聴いています。実質吸音ゼロの状態ですが質の良いライブな部屋といった感じです。これに壁紙 を貼るだけで十分に合格点が出せる位ですが、これから約半年音楽を聴きながら内壁と調音の仕様を練る予定です。少しフラッターエコーが聴こえます ので、壁の並行面を無くすのは必須と感じています。


5.工事費用
今回遮音工事に要した材料の費用を纏めてみました。防音材(吸音ウール、ロックウール、アスファルトマット、 吸音ゴムマット)が55%を占めているのが分かります。グラスウール(32kg/㎥)のみを使って遮音するとコストを削れますが、同等の遮音レベルを得る 為には壁厚が2倍程必要となりますので、コストと部屋のサイズのどちらかを取るかの判断になります。

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6.特性
まだ引越し用段ボールが多数散らばっている状態ですが、スピーカーから2.7mの試聴位置にて周波数特性を測ってみました。定在波に関してはこれ 以上は無い位良い特性が得られました。サーロジックの定在波パネルとまだ片付けていない段ボール箱が効果的に効いているような気がします。

旧リスニングルームから持ってきたパネルを仮置きした状態
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周波数特性
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下記のプロットが我が家の残響時間の測定結果です。残響時間は平均で約0.6秒ですので、強化石膏ボード仕上げを考慮すると妥当な値と思います。 壁にはサーロジックのSVパネル、定在波パネル、桧の合板数枚が立てかけてありますので、その影響も測定結果には含まれています。我が家の部屋の 容積は88㎥(床面積は15畳程度)ですので 0.55秒が音楽(クラシック)鑑賞には最適とされていますので、内装を仕上げるときには吸音層を 追加してクラシック鑑賞に最適な残響時間にします。


残響特性
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7.まとめ
昨年までは都内のマンションの狭い一室で大型スピーカーで音楽を聴いていましたが、昨年定年を迎え伊豆高原に生活の拠点を移しました。今回リフォームして私にはもったいないような15畳程のリスニングルームが手に入りました。この部屋からの山間に沈む夕日を見ながら音楽を聴いていると心が休まります。そして、オーディオを趣味にしてきて良かったと思う一時でもあります。

村上春樹の小説「1Q84」の中に現れた「二つの月」を連想させるガラス窓に写り込んだリスニングルームの照明。「現実」と「夢」が交差している幻想的な世界にも見えます。

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これから、この新たにできたリスニングルームを起点に皆さまと交流が出来ればと願っています。